―カニ山のナラ枯れの状況をわかり易く色分けして図にしてみました。
カニ山でカシノナガキクイムシの穿入が始まったのは昨年の事です。
キャンプ場のカマドの附近、踏圧で裸地化した区域のコナラが集中的に攻撃されました。カニ山の会の記録では、カマド付近で15本、南斜面下で3本、東側で3本が罹患、そのうち枯れ程度の最も進んだ10本ほどが伐採されました。会の活動エリアである東端の樹林では、コナラ41本の内、フラスを確認したのは2本(5%)でその内の1本は僅かに枯れ始めた程度だったので伐採はありませんでした。
罹災2年目の今年はどうでしょう。罹患木(フラスが出ているもの)は一気に28本(68%)に増加、昨年1本だった枯れは11本(11倍)に増大してしまいました。
ひきずり坂より東側(カニ山)では、図でも分かる通り枯れが全域にわたって拡がっています。数量的に申しますと、この区域には243本のコナラがある事になっていますが、この間に「会」として目視確認できたのは223本です。
その内カシナガに穿孔され罹患したのは127本(60%)、やや枯れ、半枯れが23本、全枯れ64本と合わせて87本(40%)が枯れてしまいました。
直ぐに倒れたりはしないまでも、樹冠部の枝先が枯れ始め腐朽枝の落下がすでに起こっています。
ひきずり坂側の崖面や、キャンプ場南の緩斜面、人家に面した東樹林南面などは、早急に処置する必要があると考え、緑と公園課からの49本の伐採及び枯れ枝を切り落とす提案を了解し、併せて最近になって急速にフラスが増えている樹、急に枯れが進んでいる樹、通路や人家際の罹患した危険木など追加措置を要請しました。
この地域で初めてカシノナガキクイムシによるナラ枯れが起こったのは昨年2020年です。
私達も初めてのことで、フラスや穿入孔に気付いたのはもう夏を過ぎた頃でした。
そして迎えた被災2年目の今年、50本ものコナラを処分せざるを得なくなり、来年は、もっと拡大する事だって十分予測されているのです。こんな事態を誰が想像していたでしょう。
カニ山がこんな事態に陥るなど誰一人予測していなかった頃の事です。入間や若葉町に続いて深大寺自然広場(カニ山付近)の「崖線樹林地の保全管理計画」の調査策定作業が行われていました。「会」が保全活動をしている東樹林も大径高木化が進み(先行して伐採したコナラは年輪で70余年を数えた)、天を被う樹冠が年々競り上がり、暗くなるばかりの森では林床の植生が貧弱になって来ます。たまたま台風などで樹冠に隙間が出来たりすると、やはり林床に陽光の注ぐ森にしないと自然の豊かな森にはならないと感じていました。
しかし都の所有である樹を伐る事は出来ないし、大径高木化が進む樹林は年々素人の手に負えなくなるばかりという状況で、都市近郊の雑木林の保全管理はどうあるべきなのか、ボランティアに何が出来るのか・・・活動しながらも常々考えたものでした。
「崖線樹林地の保全管理計画」深大寺自然広場版が策定・発表されたのはそんな時だったのです。この計画の最大の特長は、雑木林の更新という新たなテーマが加わった事だと考えています。伐採を含む倒木跡等に実生育成の苗を植樹し、年計画で更新して行くというものですが、これまでの触らずいじらずの保全方針に比べ、非常に画期的な方針が出されたと捉えていました。
しかし新たな保全計画がスタートを切ったその年にナラ枯れが起こり、嫌も応もなく当該年度に10余本、2年度目で更に50余本を伐採せざるを得ない事態に至っているのが実情です。
見方を変えれば、雑木林を蘇らせる絶好のチャンスかも知れません。
保全計画の検討を進めた、樹林という根本の状況が激変してしまった今日、早急に政策的な検討を再開し実情に基づいた、深大寺自然広場全体の開発・保全計画を策定し直す必要があると思います。
かに山の会 瀬本敏行