2021年 若葉の森のキンラン

大村 哲夫(雑木林連絡会/若葉緑地の会)

●最も早い開花
「若葉の森」(若葉町3丁目の国分寺崖線樹林)では4月4日にキンランの開花を確認しました。昨年(2019)は4月11日、一昨年(2018)は4月8日、それ以前の2015年までは4月20日以後に開花を確認。私は10年あまり当地のキンランを観察していますが、大づかみに言って、10年前は大型連休中がキンランの「花見」シーズンだったのが、ここ2、3年は10日から2週間も早くなっている感じです。今年は連休初日の29日現在、学生寮脇(開花がいつもやや遅れる)を除いて、花はほぼ終わっています。

キンラン開花確認 2021年4月4日撮影
ほぼ満開 2021年4月10日撮影
満開 2021年4月19日撮影

●3月の気温が開花時期に強く影響
 調布市に最も近い気象庁の観測点である、府中市の1月2月3月の平均気温を対象に、過去45年間の変化をグラフにしてみました(データがそろうのが1977年以降のため)。毎年、かなりの変動があり、1984年の寒冬(2月に1℃、3月でも4.1℃)、2002年3月の高温(10.9℃)、それを大幅に超える2021年3月(先月!)の11.9℃が目立ちます。そして、エクセルの「近似曲線」機能を使って長期的トレンドを線形で表すと、3月の平均気温が45年間に3℃近く上昇したことがわかります。これに比べて2月は2℃程度、1月の上昇は1℃以下です。
 これらのデータ入力はかなりの手間でしたが、足元で進んでいる温暖化の勢いが如実に感じられて、何だか怖くなるほどでした。

 このグラフに東京都心の桜開花日を重ねてみました。ピンクの折れ線が下方に行くほど開花日が早いのですが、とくに3月の気温との強い相関関係がみられます。記録的な低温だった1984年には桜開花が4月11日と最も遅く、最も暖かい3月だった今年は最早(2020年とタイ記録)の3月14日です。当地のキンラン開花日にも、桜開花日の早まりと同じ傾向がみられるのではないでしょうか。
 なお、2019~2020年の冬は府中の冬日(日最低気温が氷点下)が25日と(おそらく記録的に)少なかったのですが、2020~2021年の冬は45日と例年並みでした。今年の1月は平均気温は低めで、体感的にも寒かったですね。しかし2月以後はたいへん暖かく、それがキンランの開花を早めたと推測されます。

●早い春の何がいけない?
 地球温暖化の影響は、台風の猛烈化など一部はすでに体験済みで、その深刻さは皆さまご承知です。しかし、美しい花々が2週間早く咲いたところで何が問題なのか?寒さが早く緩み、うるわしい春の訪れが早まるのだから、生きものたちにとっても好都合ではないか?
 ここでは私の観察の範囲で得た限られた情報を基に、この問題を考えてみます。

(1)キンランを通年観察すると、冬季の温暖化が生活史全体に影響しているように見えます。秋に地上部は枯れ、果実が裂けて微小な種子を散布し、冬には姿を消すのが普通でした。ところが近年は、翌春の花の脇に前年の地上部が枯れ残っている例が増えています。しかも、果実が裂けないまま越冬しているものもあります(下の写真左)。
  関連して、冬に地上部が枯れ残った株では、春に地下組織から複数の花茎が伸びて花の数も多くなり、年々豪華な株が多くなっているようです。
(2)当地のキンラン生育地のごく近くで、サガミラン(やはり絶滅危惧種)という、変わりダネのランがみられます。光合成をせず、地下の菌類から栄養をもらって生きる菌従属栄養植物です。だから、葉っぱなどという余計なものはつくらず、夏と秋に花を咲かせ、種子を散布すると、地上部はさっさと枯れてしまう。これがサガミランの生活史のはず。ところが、ここ2年続けて、地上部が枯れないまま越冬し、果実が青いまま残っているのを観察しています(下の写真右)。これを「寒さに負けず、がんばった」と言ってよいのでしょうか。
(3)キンランもサガミランも、種子の散布を終えれば、生活条件が厳しい冬は地上部を「整理」して過ごすという戦略をとってきた。だから、上記のように地上部を残して、種子を撒き散らさないまま冬越しすることは、長い目で見て繁殖にマイナスなのではないか。温暖化によってこれが起きているとすると、生存戦略の変更を迫られるかもしれません。

(左)枯れ残ったキンランの果実 2020年4月19日撮影 
(右)サガミランの果実 2020年3月29日撮影

●ギンランは減少傾向止まず
 昨年は4月29日時点でギンラン(またはササバギンラン)の開花を確認できなかったのですが(その後、少なくも1株確認)、今年は4月23日に3株が花をつけていました。ただ、いずれも互いに離れた場所に生育しており、隣接地の宅地開発で環境が大きく変わる前の第一緑地のような群生は見られなくなっています。

ギンラン(またはササバギンラン) 2021年4月23日撮影

●新しいメッセージ・プレート
キンラン保護のためのプレートをリニューアルしました。
「わたしをとらないでね! 皆さんの見守りで若葉の森にキンランが戻ってきました。キンランは森の木の根っこの菌とつながって生きています。掘り上げられると枯れてしまいます」。
作者は仙川のカフェ「ニワコヤ」の笠原文代さん。(大村)

花とミツバチ

4月の初めに塩山ハイキングに行きました。
あたり1面桃色。しだれ桜も夢のよう。

でも桃の果樹園は受粉作業で忙しそう。
「大変ですね」
「そうなんですよ、昔はハチがいたんだけど今は自分たちでやらないとね」

最近昆虫が減ってきた、と聞いても住宅街に住んでいる者としては「でも住宅街だからこんなものなのでは?」と思っていましたが塩山のようにのどかな田園地帯でもハチがいなくなったというのだからこれはホントに困ったことかも。

数年前に環境市民会議会員の石森さんが「昔このあたりに普通に咲いていた草本植物を増やして、ハチも増やしたい」という意図で「ここはな」という活動を始めました。
ここのところ数人がお手伝いして校庭の隅や佐須の畑の隅を借りてオカトラノオやミソハギ、ツリガネニンジン、ホタルブクロetcを育てています。

先日田んぼの学校(佐須地区)を覗いたらレンゲが花盛り。きれいだなあ、と遠目に見ていましたが、近づいてみるとブンブンとハチが忙しそうに飛び回っている。こんなに沢山のハチあまり見たことありません。
ほとんどは西洋ミツバチのようですが中には少し毛色の違うハチも…。
調布で養蜂されているハチでしょうか?
ここにはここの花、もっと増えるといいな。

今年も田んぼの学校に咲くレンゲ

ハチは忙しく働いていて写せませんでした。
田んぼの学校もここでの活動は今年一杯ということで、とても残念!(鍛治)

若葉町崖線樹林のナラ枯れで伐倒撤去第1号

若葉町3丁目第2緑地の大坂脇にあるため、倒木リスクが心配されていたコナラの感染木(樹木番号216)は9月24日、市の委託業者によって、まず6~7mの高さまで幹が切り詰められ、その後、29日までに伐倒されました。樹高25mの大木だっただけに、29日朝の現場では、ぽっかりと大きな空白ができてしまった感じがしました。

枝葉は一時現場に置かれていましたが、29日までにすべて撤去され(どこで処理されるかは情報なし)、残った根はビニールで覆われています。10月になっても稀にカシノナガキクイムシが活動することがある(9月24日のナラ枯れ研修会講師)とのことなので、おそらくカーバム剤の燻蒸が行われたのではないでしょうか。

第2緑地では、幸い9月中の新たな感染拡大は見られないようです。大量のフラスが根元にたまっていても、葉が枯れる前で踏みとどまっているコナラがあります。

伐倒された大阪脇のコナラ感染木

「カシノナガキクイムシの生態と防除について」という市主催の研修会が9月24日午前、グリーンホールで行われ、樹林保全の市民団体と公園管理等を市から受託している造園業者まど、40〜50人ほどが出席しました。講師は(株)緑生研究所主任研究員/(一社)樹木医会会長の松本竹吾氏。

ナラ枯れの仕組みと感染防除の方法に関する説明に加えて、触れるだけで皮膚に炎症を起こす、カエンダケhttps://ameblo.jp/doppel611/entry-11005627991.html)という強毒性のキノコが被害木周辺に発生することがあるとの注意喚起も。

緑と公園課長からは、「市内の感染木は約50本であり、都及び近隣市区と連携して対処していきたい」との説明があったが、市民団体からは「大量の被害木を秋冬のうちに防除処理する計画が必要」「すぐに着手しないと間に合わない」「市民・地域住民にナラ枯れと対策について説明を」など、市への要望が出されました。(大村)