2021年9月の雑木林

入間・樹林の会

9月18日(土) 雨

 大雨のため保全活動は中止した。5人で降雨時の坂道の雨水の流れの様子をみた。駐車場横の道路のレンチからは雨水があふれて坂を流れ、樹林地側のレンチへ流入していた。坂を勢いよくながれて竹の水止めの効果はあるが、一部水止めを越えて樹林地へ流入していた。

下草刈りの要望があった民家横の下草の生え具合を確認し、大雨の為作業は9月はできないこと、10月も植生調査の為できないので市へ報告することにした。ナラ枯れについては先月確認した以外に竹林内のシラカシ1本を確認した。

竹林にはクズがはびこっていたので伐採が必要である。雨の中でシラカシの幹を登るミスジマイマイが何匹も見られた。(安部)

次回は10月17日(日)植生調査と保全活動

樹林地内に入る雨水
民家横の下草の状況確認
倒木のキノコ(名前不明)
ナラ枯れフラス
シラカシに集まるミスジマイマイ
クサギ実

若葉緑地の会 第3緑地にも「ナラ枯れ」が拡大

9月12日(日) 曇り 参加者4名

9月上旬は20℃前後の涼しい日が続いて驚いたが、中旬になって暑さが戻った。それでもこの日の最高気温25.8℃。ただし湿度は高く、蚊の攻撃は猛烈。この夏は7月と8月の月間雨量(府中)が平年の約2倍と、雨が多かった。そのおかげか、第一緑地では裸地化していた崖線斜面にアメリカセンダグサなどが茂った。第3緑地でも活動を休んだ8月のうちに、緑が一段と濃密になった。

作業は2か月ぶりなので、まず周辺の道路の落葉掃きから。続いて、早春にタチツボスミレの群落が生育する一画の下草刈り。歳のせいもあろうが、久しぶりの屈んだ姿勢の作業はきつく、汗も噴き出る。

昨年、「ナラ枯れ」感染の徴候がシラカシ1本で見られただけだった第3緑地。しかし、ついに複数のクヌギの感染が見つかった。比較的若いクヌギが全枯れ状態で、二又の大径木にはフラス(カシナガキクイムシが侵入したことを示す木の粉)が発生している。フェンスを隔てた隣接住宅の庭のクヌギ1本も枯れている。

9月12日の活動日には花茎が見えただけだったヒガンバナが、21日には見事に開花していた。(大村)


若葉3・1会 ついに地面に草が茂り、緑の森に!

9月5日(日)くもり参加者9名

●活動が休みだった7月・8月の間に、若葉の森の様子はすっかり変わっていました。これまでずっと土が乾燥して植物が育たず常に裸地となっていた第一緑地の地面に、さまざまな草が生い茂り、まさに「緑の森」となっていました!

●第一緑地の中央裸地に階段状に設置した竹による土留めに、アメリカセンダングサをはじめとする草が高さ1mほどに大きく育っています。土留めを設置した効果を実感しました。ただ、6月の活動時に見られたケヤキやコナラの実生は育たなかったようです。

●樹林「再生」の第一歩として、この6月に第一緑地の斜面地に植樹したマユミ、ムラサキシキブ、ガマズミは、この夏の暑さの中でもしっかりと根付いていました。樹木の生長は、草に比べると本当にゆっくりですね。焦らずに見守ります。

●緑地内で剪定した丸太や枝を使ってコンポスト柵にしていますが、夏休みの親子がカブトムシ等を捕りに来て丸太をひっくり返していったのかな(?)、柵が跡形もなくなっていました。丸太や枝の再設置と、柵を竹ひごで囲う補修を行いました。

●第一緑地・第二緑地とも7月~8月の間に昨年よりも速いペースでナラ枯れの被害が進んでいました。非常に危機感が高まります。効果があるかどうか確証はないのですが、若葉の森でも、カシノナガキクイムシの開けた穴に爪楊枝を打ち込む対策を行いました。(内堀)


カニ山の会 今シーズン最後か、東樹林東の草刈り

9月11日(土) 参加者10名 晴れ

 8月の例会が雨で作業出来ず、またナラ枯れ調査の緊急活動が入ったので、保全作業は7月以来で、担当3エリアはどこも夏草やササがのび放題。今日は、東樹林東の苗圃跡のボサ刈りを実施した。2名はフゴ袋、一輪車で搬送、残り全員で草刈り。民家との境界壁際から刈り始め林床の下草も7割かた刈払われ、見違えるほどすっきりした。

 午後も作業をしたが前回の作業で発生し片付け切れなかった伐採木、剪定枝、摘まれたままの刈草の搬出は時間切れとなってしまった。

皆で草刈り
民家脇も丁寧に

 林床には実をつけ始めたヤブランの他、ミツバチが好む在来野草を植えた場所ではキンミズヒキ、オトコエシ、オトギリソウなどが咲いていた。(S&K)

ヤブラン
キンミズヒキ
オトコエシ
オトギリソウ

9月15日(月)晴れ 臨時活動日 参加者3名

 カシノナガキクイムシの生態、習性に基づくナラ枯れ防止対策について話し合った後、穿孔の探し方、爪楊枝を刺しこむ要領を練習した後、作業を始めた。

 今回より特に逆穿孔を塞ぎ直す爪楊枝打ちを加える事にし、まずは逆穿孔を探し出す。打込んだ楊枝がグラグラで簡単に抜けるのは殆ど楊枝の芯を喰われている。こんな場合、孔口は楊枝にくっつくような近く(あるいは同一)にあり、楊枝を避けて穿孔する場合は2mmほど離れたところにある。まずこれら逆穿孔を探し爪楊枝を再び打込み逆穿孔の処置は終わり。仕上げに楊枝を樹皮に近いところで切って短く揃えてその数を記録。

 次いで、逆穿孔以外の新たにフラスを出している穿孔を見つけ、楊枝を打込みこれも楊枝は短く切って揃え計数。(新しい作業と旧作業の数を分けて記録する為、計数した後は必ず楊枝の頭を切り揃える・・・作業原則)

 まだサンプルは少ないが、穿入虫の4割強(実際には5割を超えているかも知れない)の強者が密栓に対して逆穿孔を行ったようだ。半数は効き目があったとみて、再び密栓を予定している。カシナガとの根競べである。

 新たに罹患の見つかった#860は、この一週間に50の穿入を受けている。今月いっぱいは彼等の活動期と言われているので、まだ作業の必要がありそうだ。

 罹患枯死木が伐採されるなら、代替わりの樹を育てて植樹したらどうか、との提案があった。近いうち市内雑木林の保全団体での連絡会が行われる。ただ伐採するのではなく町田の様に市がナラ枯れ防除の市民運動の推進をするなど、カシナガの拡大を防除する積極的な方策を検討するよう要望したい。(瀬本)

2021年8月の雑木林

カニ山の会 今年のナラ枯れはいよいよ深刻

8月14日(土) 雨 参加者5名

8/9にカニ山の状況を下見しナラ枯れ木の調査を予定したが、かなりの雨のため調査は中止としカニ山全体の罹災状況を観察した。

  1. .昨年はキャンプ場の裸地周辺の樹が中心だったが その南、林床がササの南斜面のコナラ林に拡がり、多くのコナラの葉が赤茶色に枯れている。(1か月前と一変)
  2. 東樹林(カニ山の会の作業エリアでも枯れを3本確認(昨年は1本)
  3. 北側ゲート付近、ひきずり坂崖上の2本のコナラ古木・大木の葉が枯れ始めている。
  4. 野草園付近、園の東崖線のコナラ枯れ。谷を挟んだ西崖線の上方、及び神代農場内の東崖線にも枯れが見える。

野草園の係員の方が、今回のナラ枯れ状況を調べているのか、フラスの出ている樹には黄色のテープでマークしている様だが、マークされていない樹もありこれについては市に確認してみることとした。

カニ山会員へ

カシノナガキクイムシ雌雄1ペアーは、1つの穿孔の坑道のなかで20~50匹の子供を育てます。性比半々としても10~25対のペアーが翌年穿入孔から脱出し、それぞれ新しい坑道で更に10~25対の子孫を育てます。行政は、成虫が脱出する前に、たまたま枯死に至った樹を伐採し焼却処分していますが、伐採能力的にも財政的にも、とてもこのネズミ算的な拡大に追い付くはずがありません。

そこでカニ山の会としては、カシナガの穿入孔を爪楊枝で塞ぐ方法を採ろうと思います。カシナガ家族の掘る坑道の長さは2~3mといわれます。根元に積もるフラスを見れば頷けます。翌年の脱出を妨げるだけでも彼らの繁殖を失敗させ、ひいては病原菌(ナラ菌)の蔓延を防げるはずです。

ナラ枯れ調査マップ

8月22日(日) 晴れ 参加者6名

予定通りナラ枯れの実態調査と、爪楊枝打ち込みによるカシナガ退治を実施した。爪楊枝を刺す人、小さな金づちで打ち込む人、罹災木をチェックし記録する人、分担して合計1339ヶ所の穿入孔を爪楊枝で塞いだ。翌日会員の1人が再度チェックし更に205ヶ所を塞ぎ東樹林の罹災木は20本となった。 (S&K)

罹災木の確認

8月の雨量は全国的に記録的なものとなったが、カニ山広場でも湧き水が見られた。


入間・樹林の会

8月21日(土)晴れ 参加者13名

夏のボランティア4人(大学生1人、中学生3人)と市民活動支援センターの職員の5人とメンバー8人の13人で雑木林広場のアズマネザサ刈りを行った。林内巡回では繁茂した草をかき分けて歩くと「身近にこんな自然があるのか」と驚いていた。剪定バサミやノコギリで竹を切ったり、ノコギリ鎌を使ってのアズマネザサ刈りは4人とも初めての体験であった。怪我をしないように注意をしながらメンバーが1対1で付き添い笹刈りを行った。蒸し暑い日だったので30分毎に水分補給を行いながらの作業だったが、笹刈り後の達成感を感じたようだ。カナヘビの子どもやカマキリの抜け殻、ミスジマイマイ、キチョウ、カラスアゲハに出会ったりと自然を体感していた。早めに切り上げ鎌やハサミの手入れも全員で行った。学生たちは初めての笹刈りなどの体験は楽しかったとの感想だった。

剪定バサミを使って交代で竹切りを
アズマネザサ刈りを行う学生ボランティア
笹刈りの成果
道具の後片づけ

1丁目樹林地では初めてのナラ枯れの木がツバキの森のシラカシの大木で、上部の葉が茶色くなり、根本にはフラスが落ちていた。キツネノカミソリ、ヤブミョウガ、ヤブラン、ツユクサ、クサギ、ミズヒキ、ハエドクソウの花、ガマズミ、ムラサキシキブ、センリョウ、ヤブミョウガの実を確認した。(安部)

シラカシの「ナラ枯れ」
キツネノカミソリ
クサギ

2021年7月の雑木林

若葉緑地の会 市道の道幅「復活」に大汗

7月11日(日) くもり 参加者3名

 正午の気温(府中)は29.7℃と真夏日寸前だったが、湿度が高く、熱中症に厳重注意が必要な気象。
 前回も取り組んだ、第3緑地の西側縁辺、大坂の市道路肩に被さっている笹や土を除去する作業を続けた。笹の刈り取りは大方終わっていたので、腐葉土状になって路面に張り付いた落葉の除去が主な仕事。しかし、これは少人数では予想以上に手ごわく、大汗をかく作業となった。通行人も多い道路上なので、マスクは外しにくい。

 写真上でアスファルトが黒く見える部分が、笹などが茂り、土で覆われていた部分。この坂道は、写真左端に見える縁石までしか道幅がなく、しかも車の一方通行規制はされていないので、これだけの路面が「よみがえった」ことの意味は大きい。
 「土になる前に落葉掃除をしていれば・・・」という反省の弁も聞かれた。しかし、落葉の大部分は林縁に列をなすシラカシ大木のもの。常緑樹の落葉はほぼ年中発生するから、掃除は簡単ではない。はて、そもそもこの仕事、道路管理者の領域ではなかったか?

 大坂を挟んで隣接する第2緑地では、ナラ枯れが昨年以上のスピードと規模で拡大している。幸い、第3緑地では今のところ、その兆候がない。第2緑地でナラ枯れ感染状況を調べていたら、ヤマユリが咲いていた。何年ぶりだろう。(大村)


若葉の森3・1会

7月4日の活動は、朝からの降雨のため、中止いたしました。※8月の活動は休みです(夏休み)。次回は、第一日曜日 2021年9月5日(日)の予定です。


カニ山の会 雑木林ボラアンティア講座生と

7月10日(土 ) 晴れ 参加者8名

 行政に頼んでいた北駐車場傍らの廃棄物(伐採枝や草)がやっと搬出され綺麗に片付いていた。
 今日は前回の下草刈りと除伐で出た東端植溜跡樹林の廃棄物を現場から搬出する予定だったが、前夜の雨で搬出ルートのコンディションが悪く人手も足りないのでこれは中止。
 男性陣は前回伐採予定としてテープを巻いておいた先駆樹種などの除伐。女性陣はカニ山キャンプ場北に植えた在来植物まわりと植溜跡樹林の草刈りを行った。

 午後は雑木林ボランティア講座の第2回としてカニ山で安全管理などの実習が行われることになっていたので、講座生のサポートをしながら一緒に東エリアのフィールドで鎌、鋸の取り扱い実習を受けて実作業を行った。(S&K)

講座生もブッシュの下にもぐって草刈り
講座生と共に講師の説明を聞く
立ち木伐採のデモンストレーション

入間・樹林の会

7月18日(日)晴れ

 コロナ禍で参加できなかった1年3か月ぶりのメンバーも参加、11人で植生調査と若葉の森の実生の苗木(ホオノキ1本、カエデ3本)の移植の2手にわかれて活動した。
 方形枠が壊れていて交換用の4つの方形枠を元メンバーが作成してくれたので設置を試みた。林内巡回時に苗木の移植場所を決めた。林内は樹々の葉が茂り陽がささないので、メンバーからも思わず「暗いね」の声がでた。シャガの広場は、ここ1か月でまたヤブミョウガが通路も覆うほど繁茂していた。
 根本さんも花は少ないね、と言いつつ、ヤブミョウガ、マンリョウ、ミズヒキ、ツユクサ、トキワツユクサ、ヨウシュヤマゴボウ、ヒヨドリジョウゴ、ハエドクソウ、ミョウガ、キツネノカミソリ(つぼみ)、ヤブランがみられた。すぐそばの樹々からウグイスのさえずりがバックミュージックとなり気分よくさせてくれた。次回は8月21日(土)(安部)

若葉の森のカエデを樹林地入口に移植
アザミ
ヨウシュヤマゴボウ花
ヘクソカズラ花(NTT研修センター)

若葉町・入間町の崖線樹林で「ナラ枯れ」が急速に悪化

●若葉町では第2緑地コナラの3本に1本に被害
若葉町3丁目第2緑地の「ナラ枯れ」が近くの市道上からもはっきり見えるようになりました(下の写真)。これは、崖線斜面のコナラにも感染が拡大したためです。7月20日現在、第2緑地のコナラ38本(2014年の毎木調査で登録、うち2本は2020年のナラ枯れ感染で伐倒)のうち、13本で葉の枯損が見られ、6本は最悪の「全枯れ」状態です。被害はすでに全体のおよそ3分の1にまで及んでおり、7月に入ってからの急速な悪化の勢いはいまだ収まる気配がありません。
第2緑地では、クヌギ2本とアカガシ1本にも枯損やフラス(おがくず状の粉 感染の徴候)発生が見られます。(※)
(※)衛藤譲二氏(若葉の森3・1会代表)の詳細な調査データに拠る。

↑2021年7月25日 若葉小学校正門前の市道から。ロケバス会社駐車場の直上。
↑2021年7月22日 市立第4中学校の校庭脇の市道上から。

若葉町3丁目緑地の外ですが、実篤公園南側の崖線樹林(「カブトムシの木」の奥、市有地)でもナラ枯れが発生。昨年、感染したコナラが市によって伐倒または強剪定されたが、その隣で発生しました。

●入間2丁目緑地でも被害拡がる
旧NTT研修センター敷地(現在は学校、高齢者施設など)を囲むようにつながる、入間2丁目緑地でもナラ枯れの被害が拡大しています。7月20日現在、同緑地西地区(登録樹木総数282本)で9本、南地区(同前210本)で7本、東地区で(同前515本)で8本のコナラ・クヌギが「全枯れ」またはそれに近い被害を受けています。若葉町3丁目第2緑地よりも、はるかに規模が大きい樹林なので「感染率」はまだ低いですが、警戒が必要です。(※)
(※)衛藤譲二氏(若葉の森3・1会代表)の詳細な調査データに拠る。

●樹液を流して感染と闘っている?
昨年の感染は、第2緑地平坦部に生育していたコナラの老大木2本(樹高24m・胸高直径60~80㎝ほど)の葉が8月に全て枯れたのが最もひどい症例で、これらは倒木の危険と感染拡大防止のため、やむなく伐倒されました。
一方、ナラ枯れ菌を媒介するカシノナガキクイムシ(略称カシナガ)の活動を示す、オガクズ状のフラスが大量に発生しながらも、葉の枯死には至らなかったコナラもありました。それらの多くはこの春以来、樹皮から大量の樹液を出していますが、今年も葉の枯損が始まっていない木が見られます。このように樹液が流出した樹木に枯死をまぬかれた個体が多いことが、複数の論文で報告されています。

参考:ナラ枯れと樹液流出の関係にふれた論文抄録
「多くのカシナガの穿入を受けながら枯死を免れたマテバシイやタブノキの被穿入木では樹幹の表面に樹液の流出跡を示すものが多かった。佐藤ら(1993)も樹液の流出だけが見られた立木は枯死しなかったとしており,当地域においても同様の傾向が示された。」(佐藤嘉一 「桜島におけるカシノナガキクイムシ被害」)「コナラ健全木では、穿孔からの樹液流出跡が半数近くの木に認められたが、枯損木にはほとんど認められなかった(表2)。」(布川耕市「ナラ類集団枯損被害の単木予防技術の効果と問題点」)

●「乾燥」との関連は不明 「壮年」のコナラにも被害
昨年、最もひどい感染状況を示した老大木2本は平坦部に生育し、林冠(林の最上層)から頭を少し出していた個体でした。今年の感染木は、平坦部以外の 南西側斜面にも分布し、それらは斜面部の林冠を形成しています。どちらも日当たりの良い環境と言えます。

日当たりと乾燥が感染しやすくなる要因との指摘もあるようですが、第2緑地は林床にアズマネザサ等の安定的な植生があり、第1緑地に比べて乾燥化が進んでいるようには見えません(あくまで外見上)。 また、今年の場合、樹齢的には老大木とまでは言えない、樹高20m・胸高直径30~40cmクラスの「壮年」期で、互いに近接した個体が枯損しているのが特徴です。

●早期の感染開始 急速な拡大
昨年、ナラ枯れによる枯損に気づいたのは8月下旬でした。今年は6月15日に3本のフラス発生に気づき、まもなく葉が枯れた個体を確認。その後、2週 間ほどで13本が感染、うち6本が「全枯れ」まで悪化しました。昨年7月に はナラ枯れを意識した観察をしていないので、単純な比較はできませんが、今 年の感染と発症がより早く始まり、より多数の個体で急速に進んだことは間違いありません。

●冬から初夏の気温上昇がナラ枯れを助長
ナラ枯れ被害と気象の関係について検討しました。
小林正秀・吉井 優・竹内道也「気象がナラ枯れ(ブナ科樹木萎凋病)に及ぼす影響に関する初歩的研究」(2014)は
「1春期の降水量の増大と気温上昇、2厳冬期の最高気温の上昇と,3カシナガの飛翔時期の気温上昇が,ナラ枯れを助長していることが示唆された」(数字は引用者)
としています。
府中の2021年観測データと平年値との比較によって、各要素が該当するかを検討すると、以下のように、①②③のすべてについて、ナラ枯れを助長する気 象条件であったことが判ります。
①については、3月の平均気温が平年値より3.1°C高い「観測史上最も暖かい3月」であったこと、3月の降水量も平年値より30mm近く多かったことから、該当します。
②については、1月2月の最高気温が平年値より高く、特に2月は2.8°Cも高かったこと(平均気温でも1.9°C高)から該当します。
③については、越冬したカシナガが脱出を始めて他の個体に取りつくのは5月下旬から(上記論文)ですが、5月6月とも平年値よりもわずかに高い気 温を記録しています。

また、「カシナガが大量飛翔可能な気温20°C以上の日が続けば,その間は継 続して集中的な穿入を受けることとなり,枯死本数が増加すると考えられ る.」(上記論文)という、20°C以上を記録した日は、5月下旬から6月のほぼ毎日(5月27日の最高気温19.8°Cが例外)です。したがって、③も該当します。

●地球温暖化が主な要因
当地のナラ枯れ発生について、気候変動の影響と即断することには慎重であり たいと考えてきましたが、上記の気象との関係の検討や、下記の記事に紹介さ れた北米における、アメリカマツノキクイムシによる被害の拡大状況を参照す ると、温暖化による地球レベルの森林破壊とつながっていることを、意識せざ るを得ません。
「気候変動 瀬戸際の地球 消える北米の森」(ナショナル・ジオグラフィッ ク日本版2015年6月号)、「カナダ西部の気温を上げるアメリカマツノキク イムシの大群、英科学誌」(サイエンス・ニュース〔ブログ〕2012年11月27日)
7月18日にBS朝日で放映された「SDGsスぺシャル グレタ・トゥーンベリ気 候変動の最前線をゆく」でも、温暖化の影響で増加したキクイムシによってカ ナダの森林が大きな被害を受けていることが紹介されました。 もちろんナラ枯れ拡大については、「燃料革命」以後、都市部の樹林が更新さ れなくなって樹齢の高い木が多くなったことも主要な要因のひとつとされてお り、複合的な要因があることに留意が必要です。

調布市内の他の緑地でも「ナラ枯れ」感染が拡大しているようです。 状況の記録と情報共有、それに基づく研究機関・行政・保全団体などが手を結 んだ対策の検討と実行が急務です。

大村 哲夫
(若葉緑地の会/ちょうふ環境市民会議)