ヨモギ(蓬)Artemisia princeps キク科
最近は「摘み草」という言葉が死語になりかけ、野に摘みに行かなくても「春の七草」はスーパーに行けばパック詰めされて売られている。「よもぎ餅」も一年中売られており、季節感と香りがなくなってしまったような気がする。
ギリシャ神話の女神のArtemis(アルテミス)の名を貰ったヨモギは餅草、艾(モグサ)、指燃草(サシモグサ、サセモグサ、)サセモ、エモギ、タレハグサ、ヤキクサ、ヤイトグサなど数えきれないほど沢山の別名で呼ばれており、これは各地で古くからさまざまな形で利用されてきたからである。
春先の若葉は草餅や団子、天麩羅の材料として、夏には燃やして虫よけ、乾燥して葉の裏の綿毛は灸に使われてきた。また、ヨモギは地下茎を四方に広げて伸ばし、河川の土手などの崩壊を防ぐ効果もある。それだけでなく、漢方薬や民間薬として、食べる、飲む、浸ける、香りをかぐ、もぐさにするなど、万能薬として珍重され、日本ハーブの代表的な存在である。
ヨーロッパには同属のニガヨモギやオウシュウヨモギが自生しており、どちらもハーブとして親しまれ、リキュール(アブサン)にも使われている。
戸部英貞